マヂカルラブリー優勝の『M−1』が賛否両論である理由 正統派の敗北

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2020年の『M-1グランプリ』(テレビ朝日系列)は、マヂカルラブリーの優勝となった。今回はなかなか賛否両論も多い大会となっているようだ。なぜだろうか。

■「しゃべくり漫才」の伝統

まずは、ファイナリスト全体の結果に着目してみよう。漫才には伝統的な型を有する部分があり、それはナイツ塙も『言い訳 関東芸人はなぜM-1で勝てないのか』(集英社新書)で触れている。
つまりは、いかに「しゃべくり」で笑わせるかの上方の「しゃべくり漫才」の伝統だ。今大会も従来通り、型を重視する傾向はあった。オズワルドがまさにその壁にぶつかる典型的なコンビであり、昨年同様優れたネタを見せたものの、結果は振るわず。
日常会話を披露するというよりは、変人とのコントに近い会話であり、ゆえにツッコミもよくある漫才のようにはハマっていかず、悩みの種となる。
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■おいでやすこがの爆発力

錦鯉も、面白く、笑いをとれていたものの、同様に、コントのように変人と対峙する漫才らしくないネタが今一つ評価を上げ切れなかった。しかしながらそのような中、爆発力のあるツッコミで最高得点にて最終決戦へと勝ち上がったコンビがある。おいでやすこがだ。
その後も、ツッコミを務めたおいでやす小田が、そのツッコミネタで『M-1』の空気をしばらく支配していた時間があった。
またマヂカルラブリーも、 ツッコミの隣で大きく動き回りボケるネタであり、しゃべくり漫才の形とは大きく離れるものの、2位通過で最終決戦へと進んだ。

■正統派と異色派

今回「しゃべくり漫才」の型を非常に重視した審査員が、1人印象的であった。オール巨人である。2位通過のマジカルラブリーに88点という、巨人の中でも低めの点をつけているのは特徴的だ。
しかし、巨人においても最高得点はおいでやすこがであったことに、おいでやすこがの漫才の秀逸さが示されている。そして今回特徴的であったのが最終決戦であった。
見取り図が正統派に近いしゃべくり漫才であり、マヂカルラブリーはしばらくボケで寝っ転がる時間があるようなネタであり、おいでやすこがは引き続き歌にツッコむ形であった。

■最終決戦の審査

3組中2組が正統派「しゃべくり漫才」から遠くかけ離れている事態に、審査員たちはこれまた面白い審査結果を下す。
巨人が見取り図に票を入れたのは、いかにも「しゃべくり漫才」を推すものであった。同様の結果を下したのは、塙である。松本人志と上沼恵美子はおいでやすこがに票を入れた。

■ギリギリの判断か

優勝したマジカルラブリーに票を入れたのは他3人であったが、そのうち立川志らくのコメントは興味深い。志らくは、おいでやすこがを一番の好みとしながらマヂカルラブリーに入れたのであった。
どちらが漫才として優れているかがマヂカルラブリーということだろう。志らくが、おいでやすこがに1票を入れればそのまま優勝であり、ギリギリの判断が勝敗を分けたと言える。

■正統派に勝利した今年の『M-1』

今回の『M-1』は以上のように、「しゃべくり漫才」の伝統を破壊するような『M-1』であったと言える。
賛否両論が巻き起こるのは、いつのまにか多くの視聴者が「しゃべくり漫才」の伝統を『M-1』を通じて血肉化させていたことになる。単に「しゃべくり漫才」がシンプルで理解しやすいということもあるだろう。
様々な面からしてこのまま正統派漫才が廃れてはいかないように思える。しかしながら、必ずしも漫才を伝統の型との近さで評価すればよいわけではないだろう。
今回の『M-1』は、総じて、「しゃべくり漫才」と距離をとった形で漫才の新しい形を切り拓いた、非常に有益な大会だったと言える。
(文/メディア評論家・宮室 信洋)

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