【宿泊ルポ&社長インタビュー】おんぼろ民宿『浜の湯』が名旅館に生まれ変わるまで

伊豆といえば日本有数のリゾート地だが、その中でも際立って評価の高い温泉旅館がある。伊豆稲取の『食べるお宿浜の湯』だ。今でこそGoogleの口コミ4.5点を誇る名旅館だが、実は平成7年までは旅行会社と協定さえ結べないおんぼろ民宿だったそうな。27年の僅かな期間で、この旅館はいかに復興を遂げたのか?今回は宿泊を体験させてもらうとともに、旅館の代表取締役である鈴木良成市に再建ヒストリーを伺った。

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提供:浜の湯
この記事の目次

古き良き旅館の姿を守り続ける『食べるお宿浜の湯』

Aya.Fujimatsu
皆さんは「温泉旅館」と聞いて、何を思い浮かべるだろうか。
湯量たっぷりに流れ出る温泉?贅を尽くした懐石料理?
それとも、和モダンの粋を極めた空間?

「温泉旅館」の形もここ数十年でさまざまに変貌しているから、きっと思い浮かべるイメージは世代によって少しずつ違うかもしれない。

日本有数のリゾート地として栄華を極めたここ、伊豆に、原初の「温泉旅館」の姿を守り続けている温泉旅館がある
その旅館の名は、『食べるお宿浜の湯(以下浜の湯)』
Aya.Fujimatsu
旅の初めから終わりまで寄り添ってくれる仲居制度、一品出しの部屋食、客を想い続けるホスピタリティの姿勢……etc.
全てが、血が通ったおもてなしを感じさせる昔ながらのスタイルだ。

そんな伝統的な温泉旅館を取材する機会を得ながらにして、正直なところ、私は不安だった。
東京の核家族で育ち、家族旅行はもっぱら海外リゾートであった身としては馴染みのないものであったからだ。
果たして、『浜の湯』のオーセンティックなジャパニーズスタイルの魅力を理解できるのか――。

しかしその心配は、杞憂に終わった。
一泊二日の宿泊体験を終えてみれば、まんまと、セルフサービスの他の旅館が無機質で物足りなく感じられるようになっていたのだから。

本記事では、そんな新たな価値観との出逢いとなった、宿泊体験ルポに加え、代表取締役社長・鈴木良成氏の語る“『浜の湯』を形作る文化”をご紹介する。
筆者のような30代以下の読者にとっては、伝統的なおもてなしに新鮮味を感じるだけでなく、社長の語るヒストリーにも大いに温故知新のヒントを得られるはずだ。

一泊二日で、日本の伝統に触れる

付かず離れず、だから疲れない。仲居さんのスマートな接客術に感嘆

Aya.Fujimatsu
出迎えから見送りまで、一組の客をたったひとりで専任する仲居制度は『浜の湯』の大きな特徴のひとつだ。
今回筆者を柔らかな物腰で出迎えてくれたのは、入社4年目となる仲居の広美さん。

「ようこそ、おいでくださいました」
御年26歳とは到底思えぬほどの抑揚ある話し方と、流麗な物腰に思わず恍惚状態となってしまう。
するするとなめらかな口調で館内の説明を終えたら、お着き菓子を残して退室してしまった。

丁寧であったり、慇懃であったりしすぎる接客によって、かえって気疲れしてしまった経験はないだろうか。
小心者の筆者は、自分がこの一泊二日でそうした類の疲労を溜めこむであろうと予測していたのだが、しかし広美さんの去り際は、早かった。

完結すぎず冗長すぎず、相手が疲れを感じさせる前に離れる。
それは実にスマートな接客だった。

大海原が一幅の絵画のように広がる客室

Aya.Fujimatsu
今回宿泊させてもらったのは、ベッドサイドの大きな窓から太平洋を望む「海側ビューバスモダン和洋室」

和室10帖に、シングルベッドが2台設えられたベッドルーム、ビューバス(シルキーバス)、洗面所、トイレを完備した客室だ。
Aya.Fujimatsu
床面もそれぞれ、和室は琉球畳、ベッドルームは凹凸のフローリングとなっており、足裏から心地よさを感じられる仕組みとなっている。
Aya.Fujimatsu
ベッドルームの引き戸を開けると、壁面にタイルが装飾された瀟洒なパウダールームとビューバスがお目見え。
パウダールームの鏡面の裏には照明が備え付けられており、ライトアップすると一層小洒落た雰囲気になる。
Aya.Fujimatsu
壁際に並んだアメニティはなんと、プロヴァンス発祥の人気コスメティックブランド『ロクシタン』製
シャワージェル・シャンプー・コンディショナー・ボディローションに加えてバスキューブまで用意されており、温泉に入れなかったとしても充分に滞在時間を愉しめる仕様となっている。

事前調査した限りでは、『浜の湯』は食事と接客にもっとも力を入れており、(リニューアルされたとはいえ)空間が売りの宿ではなかった印象だったのだが……。
正直なところ、客室レベルが非常に高い。
客室の様子を動画撮影してSNSにアップしたところ、「素敵!どこの宿?」と過去最大の反響を呼んだほどだ。

「食べるお宿」の真骨頂を知る、全十二品のコース

Aya.Fujimatsu
窓際に座ってぼんやりと月見に興じていたら、いつの間にか時刻は17時25分。
電話が鳴り、受話器を取ってみれば、夕食の準備を始めるとの連絡だった。
了承すると間もなく広美さんが現れ、テーブルクロスを敷いたそのうえにセッティングを行ってゆく。
『浜の湯』の教育と本人の努力によるものなのだろう、手際が良い割に一切物音が立たない振る舞いは“上品”の一言に尽きる。
Aya.Fujimatsu
林檎の食前酒を啜ったら、宴がスタート。
前菜は以下の7品だ。
  • かき葉お浸し
  • サーモン寿司
  • 鯛霙南蛮漬け
  • 和牛有馬煮
  • 栄螺アーモンド
  • 地魚松風焼き
  • あおり烏賊木の芽味噌

塩味・甘味・酸味など、味わいがバランスよく構成されており、一皿に七色の彩を愉しめる。
Aya.Fujimatsu
続いての台の物は「鮑酒蒸し」
鉄板の上で動き回る鮑に酒を注ぎ入れ、目の前で調理してくれる。

しっとりと蒸された鮑の身は柔らかく、肝まで甘く、まさに絶品だ。

他の旅館であれば大抵、鮑や金目鯛の注文には別料金がかかるものだが、スタンダードプランにこうした豪華料理が含まれているのも「食べるお宿」ならではである。
Aya.Fujimatsu
造里「季節の鮮魚」には度肝を抜かれてしまった。
船盛を提供する宿には何度か泊まったことがあるが、こんな風に旗が立っているのは初めて。
少し照れ臭いが、歓迎の意が伝わる温かな演出だ。
Aya.Fujimatsu
気になる船盛の内容は、金目鯛、伊勢海老、鰆、ブリ、◯○、マグロ、目鯛、サザエと、まさに海の幸を感じさせるラインアップ。
傍には天城産の山葵が添えられており、擦り方によって香りが強くなったり、辛味が増したりする食材の妙味も合わせて愉しめる
Aya.Fujimatsu
炊合せ「金目鯛若竹煮」のあと、満を辞して登場したのは浜の湯名物「金目鯛姿煮」
地元の漁師の間で好まれている調理法を再現しており、甘じょっぱさが癖になる味つけだ。
舌の上に載せた刹那、ほろほろとほぐれていく身の柔らかさも注目したいところ。

ちなみに、コロナ禍で宿泊客が激減した2020年3月には、通販サイトでの「金目鯛姿煮」の売り上げが1,000万円を突破したのだとか。購入客のほとんどは『浜の湯』のリピーターだったそうだから、この料理の人気が窺い知れる。
Aya.Fujimatsu
箸休めの「冷製南瓜ポタージュ」で口直しをしたら、コースもクライマックス。
海鮮好きも唸る、絶品肉料理「和牛鉄板焼き」の登場だ。

鉄板の上に肉を置けば、良質な脂がジュワッと音を立てて流れ出す。
軽く炙ってほんの少し塩をつけて頂けば、舌の上はもう天国である。
Aya.Fujimatsu
食事の「五目釜飯」、香の物「三点盛り」、止椀の「赤出し仕立て」まで夢中で平らげたら、腹具合はもう十三分目あたりまで迫り上がってきている。
どうりで、「お昼はできるだけ軽く済ませてきてください」と客に伝えている訳だ。

ひとり納得しながら、サーブされたデザートの「胡麻プリン」、「紅ほっぺ、キウイ、ブルーベリー」までペロリと食べてしまった。やはり甘いものは別腹なのかもしれない……。

しかしながら、こうして我を忘れて食事を愉しんでしまったのは、ただ味が優れていたからだけではない。
それは仲居さんによる完璧なタイミングでの提供方法や、プライバシーが保たれた空間の中での安心感が合わさって、「食べる」ことの幸福感を最大限に引き出してくれたからなのだと思う。

食材を見て、聴いて、感じる。
五感をフルに開いて臨む食事は、実に十数年ぶりだった。
「食べるお宿」の真骨頂、ここに見つけたり。

食後は湯巡りの小さな旅へ

心ゆくまでお腹を満たしたら、今度はゆったり湯浴みを愉しむことに。
屋上フロアの「天楼の泉スカイフォンテーヌ」には、大浴場や足湯、貸し切り風呂など総数16もの湯舟が揃う。

特に筆者が気に入ったのは、満天大浴場の立ち湯。
肩まで湯に浸かり空を見上げれば、全く寒さを感じずに天体観測を愉しめるのだ。
強風によって雲が薙ぎ払われた濃紺の空には、都会の空よりも強い光で、オリオン座が煌めいていた。

朝食まで至れり尽くせり

Aya.Fujimatsu
翌朝、すっきりした気分で目覚めると、不思議なことにもうお腹が空いていた。
昨日の豪勢な食事によって、胃が活性化したらしい。
前もって希望していた朝食時間8:30を、砂漠の民のような気持ちで待ちわびていると、やがて昨晩と同じ要領で朝食が運び込まれてきた

昨晩はゆっくりお休みいただけましたか、と心のこもったお声がけも嬉しい。
何故だか広美さんの声を聴くと、筆者は安心するようになっていた。
ラポールが築けつつあるのかもしれない。
Aya.Fujimatsu
▲朝にも真鯛、アオリイカ、カンパチ、アジのたたき、甘エビが載った豪華な船盛が
黒蜜でいただくところてんに始まり、粥、(昨日食べきれずに残した)金目鯛姿煮、造里、アジの干物、ひじきの煮物、塩辛、明太子などの小皿料理などテーブルの上は満員御礼の大騒ぎ。

朝の海をぼんやり眺めながら朝食をいただけば、身体の中に食材の力がゆったりと満ちていくのを感じられる。
きっと、食べることは、命の営みそのものなのだ。

ぜひこの宿に泊まったのなら、テレビは付けず、食事に全神経を傾けてみてほしい。
“贅沢”以上の神秘的な体験が、あなたを待っているはずだから。

仲居さんのお見送りで出発する新たな一日

Aya.Fujimatsu
誰しも体験したことがあると思うが、一泊二日はあっという間。
ましてや、こんなふうに珠玉の宿で過ごす時間ならなおさらだ。バスの窓から名残惜しく宿の方を見ていると、広美さんが駆け足でお見送りに出てきてくれた。
マスク越しでもわかる、満面の笑顔で。こちらまで今日一日が楽しみになるような、生き生きとした雰囲気で。

接客してもらった合間、広美さんに仕事で一番大切にしていることは?と聞くと「お客様に仕事や家事などの日常を忘れて、目の前の景色や食事を楽しんでもらうこと」と話してくれた。
「そのためには、お客様にどんなことをして差し上げられるのか、来る前から考えている」ということも。
大切な人のための“非日常”となるために、彼女はどれだけの努力を積み重ねているのだろう。
「お客様との会話で自分自身の引き出しが増えていくから、私はお客様によって育てられている感覚なのです」と、嬉しそうに語る彼女の姿が脳裏によぎった。

おもてなしを喜びと感じる、優しいこの人のために、私も何かをしてあげたい。
精一杯の感謝の気持ちを乗せて、「本当にゆっくりできました。今度はプライベートで、家族を連れて来ますね」と伝えた。

こんなふうに心が通い合う類稀な場所だからこそ、『浜の湯』は今日多くの人々に愛されているのかもしれない。
そんなことを、ふと思った。

それは、変わらずにいる強さ。古き良き伝統を守り続ける『浜の湯』の魅力

「昔ながらの旅館文化」を継承する、二つのキーワード

Aya.Fujimatsu
――今回は宿泊させていただき、ありがとうございました。『浜の湯』さんが大切にされている、仲居さん制度と料理の部屋出しを実際に体験してみて驚きました。他の旅館さんでも、ここまでの徹底したおもてなしは体験したことがなかったので。
鈴木社長はどのような思いでこうしたこだわりを貫いているのでしょうか?
まず、仲居制度と部屋出しの二点は昔ながらの旅館文化です。
25年以上前だったら、どこの旅館も当たり前にやっていたこと。ところがバブル崩壊以降、旅館の売上がおぼつかなくなり、東京都心のホテルのように合理化を図らないと少ない売上で利益を出せない状況に陥ってしまった。経費を切り詰めるためには、何から手を付けるかというと、食材と人件費。
売上の30%を占める人件費を削減するために、仲居による担当制と部屋食をこぞって廃止し始めたんだ。料理は食事処を使ったスタイルに変え、作った料理をお客様のもとに届ける時間を短縮する方向にみんながこぞって舵を切っていった。
浜の湯だけは、そんなことをしたら都心のホテルと変わり映えがなくなってしまう。旅館文化を守らない限りは、何も誇れるものがない。他の旅館が合理化を図る中で、うちだけは貫き通した。
昔ながらの旅館文化を大切にしていくことで、日本の伝統文化を継承しようと思ったんだ。
――料理の部屋出しはとくに時間も手間もかかりそうですね。
部屋出しの料理提供も「極める」ということに注力し、一品出しするスタイルにした。25年以上前は、部屋出しと言っても、最初からテーブルに並べて、三品ずつ後出しで持っていくような方法だったからね。
部屋出しを完璧にするために、温かいものを温かく、冷たいものを冷たいままで提供できるよう温冷庫を各フロアのパントリーに導入して。仲居さんの作業を効率化するために、食洗機も導入したよ。
だからこうして、20~25年前には不可能と言われていた50部屋以上の大所帯の旅館で、一品出しのサービスが叶っているんだ。

経営コンサルタント会社なんかも「高品質・高単価の個人客宿は50部屋以上の大所帯には適さない」と言ったけど、私は仕組みさえ作ればできると思っていたから5年に1回ずつ個人客向けの設備投資を繰り返していったんだ。そうして、今現在に至っている。

部屋のタイプ数だって今は26,7タイプあるんだよ。

“ヘンテコ旅館”の弱みが強みに変わった瞬間

▲グレードの高い客室一例(『浜の湯』HPより)

――そんなにたくさんお部屋タイプが!?

今から20年前~15年前、温泉旅館は旅行会社に依存していて、集中的に送客をしてもらったところが繁盛旅館になっていた。だから、旅行会社と協定を結んで、送客してもらうことが肝要だったんだ。

けれどうちはヘンテコの旅館*で、協定すら結ばせてもらえなかった。あの悔しさが忘れられなくてさ。
平成7年には伊豆半島の中でも20億円ほどかけて建て直したから当然目立つ旅館になったけれど、それ以降も決して大手旅行会社と協定を結んで部屋提供したりはしなかったんだよ。
例えば店舗に「伊豆」というパンフレットが置いてあって、その1ページに、旅館の外観・風呂・料理・部屋など載っているわけじゃない。だから大手旅行会社は「同じ部屋をたくさん作ってください」というわけ。

――旅行会社ファーストで部屋タイプの決まった旅館が作られていったということなんですね。

そう。うちは協定すら結ばなかったから、20年以上前から全然違うタイプの部屋を作っていけたんだ。

――弱みが強みになった瞬間ですね。

そうそう。そうやって、高品質・高単価の個人客向け宿へと振り切っていけたんだ。



※ 平成6年頃までの『浜の湯』は、築20年・部屋数20室ほどの老朽化した民宿だった。

「再建後の接客は、新卒に任せようと思った」

Aya.Fujimatsu
――高品質・高単価の個人客向け宿へと変わっていく中で、接客についても抜本的な決断をしたと伺いました。
そう、あと残っているのが人(の問題)でしょ。
いい部屋を作っても、接客が悪かったらリピートなんてするわけないし、全てが台無しになってしまう。

それを誰にさせるのか、となったときに想いのある新卒の優秀な子たちと手を組んで、しっかり面倒を見てもらおうということで採用を始めたんだ。
最初の投資が平成14年10月で、露天風呂付客室を8室作ることだったから、最短で同年4月に入社できる学生を採用したんだ。
それまでの仲居さんはどうだったのかと言ったら、60歳前後の女性しかいなくて、和室の部屋で料理を出そうとしたって膝が痛いから立ったまま提供するという感じ。高品質高単価の個人客宿になりたいと思ったら、そんな状況である限りはいつまで経っても夢が実現しないからね。
最初は他の旅館に噂されたよ、「『浜の湯』は4大卒を採用し始めたらしいぞ、どうかしてる」ってね(笑)。
――再建と同時に、新卒採用を始められたのですね。具体的にはどんな風に、新卒の社員に接客させたのでしょうか?
「顧客カルテ」を徹底的に活用していくことにした。
うちは仲居担当制でしょ?出迎えから翌日の見送りまで、つきっきりでお客様を担当するなんて、そんな接客は全世界どこにもあり得ない。
ものすごく近い距離感の中でお客さんと相対しているから、ものすごく深い顧客情報が得られていくんだよ。
それをしっかりと記録に残していくこと、そして次にご来館された時、記録をもとに、お客さまに何か特別にして差し上げられるものはないだろうか?と考えることに行き着いたんだ。

旅館としての価値を見出すなら、そこまでパーソナライズしないと意味がないと思ったの。

だから、20年以上前からの顧客データがうちの財産でもあり、リピーター比率の高さの理由でもある。

些細なことが心を開く。宿の財産の「顧客カルテ」

――顧客カルテにはどんな情報が記載されているのですか?
“これを書けばものすごい大きな喜びを感じてもらえる”とか“大きく感動してもらえる”とかってことだけじゃなくて、ほんの些細なことも全て。
ご夫婦でいらしたとしたら、ご主人とどんな会話をしたのか、とか。
例えば“プロ野球の会話をして、ご主人は巨人ファンで、私は阪神ファンで、ちょうどナイターで巨人阪神戦をしていて、会話に花が咲いた”とか、そんなことを書いているだけでも次いらした時に「また同じ係がついた」ってお客さんもなんとなく思い出してもらえるんだよね。
「そういえばご主人、前回お泊まりいただいた時にこんな会話しましたよね」と話すだけで、お客さまとしては自分のことを覚えていてくれたと思い、心を許し始めてくれる。
そして、普通では言わないような家族の悩み事を打ち明けてくれたり、そんなところまでいっちゃうんだよね。
――顧客カルテのサンプルを見せてもらったのですが、お客さまのご様子ややりとりの経緯を書かれていたのが印象的でした。サンプルのお客さまの例では、夕食のお時間を18時に決められたそうですが、17時半とすごく悩まれていたということまでメモされてあって。きっと他の旅館さんでは書かないだろうなと。
そうそう。項目にただレ点を入れるような数値化されたカルテでは見えてこない、それ以上のお客さまの機微をメモしておくんだ。いろんな場面でその記憶を利用して、お客さまの喜ぶ接客をするんだよ。
そんな些細なことですら、心を開けるということ。それがカルテの意味だと思う。
――そうした観察力って、短期間で鍛えようとしてもなかなか難しいのでは?と思うのですが。先天的に“気づくタイプ”の学生を採用しているんですか?
そう。採用に関しては、うちには人事がいなくて私ひとりでやってるんだよ。
旅館としてのやり方や方向性に共感してくれる人だけ来てくれれば良いというスタンスで。
担当制を採用すると当然、拘束時間は9時間半前後と長くなるんだけど、これだけの喜びややりがいがあるんだということを説明する。
そのうえで“心から接客を希望している”、“自分が喜ぶより人の喜んでいる姿を見た方が嬉しい”っていう子だけを採用しているんだ。そうすれば、カルテを書くための訓練なんてしなくて済むからね。

――そもそも書き方なんてないものですものね。

うん。個々が違った感性を持ち合わせているわけじゃない。
自分の感性を大いに接客に生かしなさい、と教えているんだ。今ここでこうしたらお客さまが喜ぶ、と感じたのだったら、勇気を持って行動に起こせと。だからうちには、マニュアルらしいマニュアルが一切ないの。

お客さまに相対している仲居さんに最大権限を上げるというスタンスだから、上司に確認して参りますと言うことが一切ない。自分の感性で勝負ができるって言うことだよね。
――今回は宿泊体験に加え、鈴木社長のヒストリーを伺うことで、部屋出しと接客に掛けた想いをより深く知ることができました。旅館はまさしく日本文化として継承されるべき、崇高なものであると今感じています。貴重な体験をさせていただき、ありがとうございました。

ここを知ったら戻れない。『食べるお宿浜の湯』の一段上の魅力

Aya.Fujimatsu
「人間は、“人の間”と書く通り、人の中でしか生きられない」。
そんな言葉を聞いたことはないだろうか。
いくら社会のシステム化が進もうと、いくら厭世主義がはびころうと、いくら現代で義理人情が“なんかダサい”ものに成り果てようと――。人の心を打つのは最終的に他人の存在なのかもしれない。

ほとんどの旅館が合理化に振り切った今において、『浜の湯』の接客は確かに少しもの珍しく感じられるものだ。けれど、一度体験してしまえば、否が応でも知ってしまうはず。
そこには心の通う温かさがあり、そのぬくもりこそが究極のリトリートなのだということを。

食べるお宿 浜の湯
沼津・伊豆半島/ホテル
食べるお宿 浜の湯 1枚目
食べるお宿 浜の湯 2枚目
食べるお宿 浜の湯 3枚目
★★★★★
★★★★★
4.05
4件
25件
住所
〒413-0411 賀茂郡東伊豆町稲取1017
アクセス
伊豆急行線 伊豆稲取駅から1123m
宿泊時間
15:00(IN) ~ 10:00(OUT)
静岡県の食べるお宿浜の湯!小さな民宿から、リピーターが多い人気で予約が取り組いにくい宿になってます。昔の宿泊施設は、代理店からの送客してもらうビジネスから、お宿自ら集客するビジネスに変えた先駆者の宿かもしれません。また金目鯛を食べに行きます!
📍静岡県/浜の湯とにかくお食事が盛りだくさん出てくることで有名な静岡の温泉旅館【食べるお宿浜の湯】。夕食の量にも驚いたけど、朝食に舟盛りが出てきた時は流石にびっくりしました!笑朝食の舟盛りはこちらの名物らしい。金目鯛の大きさが伝わりづらいですが、とにかく大きいです。ボリューミーなだけでなく、本当に美味しいお食事で大満足。私たちが宿泊した部屋はハンモック付きのユニークな部屋。目の前は海でハンモックにゆられると超気持ちいい。ちなみに、希望すればテラスで朝食が食べれるそうです。家族を連れて行きたくなるような、素敵なお宿でした。ご馳走様でした!

期間限定のタイムセールを公式HPで実施

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