農産酒蔵 丸本酒造

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この記事の目次
今でこそ自社田で米作りを手掛ける酒蔵も増えていますが、30年以上も前から酒米作りに情熱を傾けて来た、岡山県の
丸本酒造
さんへお伺いし社長の丸本さんにお話を伺いました。

日本酒にとって原料のお米とは?

それではまず、日本酒の原料であるお米について、同じく代表的な醸造酒であるワインと比較してみよう。
ワインの原料はもちろんブドウですね。そしてワインの香味を決めるのも主にブドウの質である事も知られているところだと思います。そして、そのブドウの品質を決めるのが、栽培地の気候であり栽培する畑の性質です。その為、有名なワイン銘柄や産地に関してテロワール(土地)やドメーヌ(自分の畑でブドウを生産しワインを造る生産者)が語られる事が多いと云う訳です。では日本酒の場合はどうでしょうか?
日本酒の原料はお米ですが、契約農家から購入するケースも有りますが、ほとんどの蔵元は、山田錦や五百万石、雄町などと言った酒米を、その産地の農協から購入しています。お米は農林水産省指定の検査機関で検査されますので、一定の品質は保証されていますが、各農家から農協に収められたお米は混合されてしまうので、生産者ごとの品質は平準化されてしまっています。また、日本中のどこからでも原料米は調達できるので、北国の蔵元が現地では生産されない山田錦や雄町を原料としてお酒を醸す事ができるので、日本酒の場合は灘五郷の一部銘柄などを除いて、近年まで原料の米の産地とお酒の産地は余り強く結びついていませんでした。

玄米の等級検査に対する疑問

学業を修め蔵に帰った丸本社長は、蔵の仕事を手伝っている中、製造原価の半分以上にも及ぶお米はお酒の商品性にとって大変重要なはずなのに、酒米の品質に関して関与できる余地が少ない事を疑問に思ったと言います。ご存知の様に酒米の玄米は
等級審査
を受けて特A〜の等級が付けられますが、これは外観(大きさ、粒の揃い、色など)のみの評価で決まる為、酒造りで重要なタンパク質の含有量などは評価されず判らないと云う事実があり、小さな酒蔵として活路を見出そうと考えていた丸本さんには納得がいきませんでした。特に農家にとってはこの級別審査で買取価格が決まるので審査で有利な大粒の米を作りたいし、収量も増やしたいために化学肥料(特にチッ素)を多く与えて栽培しがちです。この様にして育てるとタンパク質含有量の多い米になります。しかし、酒造りにはこのタンパク質が雑味の原因となり良い酒を醸すには不向きであると云う問題点も感じていたのです。そこで、昭和62年(1987年)から原料米の自家栽培に取り組み始めたそうです。

丸本酒造の自家栽培

地方の小さな蔵元として独り立ち出来るものを持ちたい、その切り札として米作りに取り組み、独自の品種の育成や生産技術の向上に取組んできました。米の品種は、岡山県の気候が適していた(生産量は兵庫県についで全国2位)事もあり、酒米の王者とも言える山田錦を主に育成しています。また、栽培方法も農薬や肥料を限界まで抑えて育成する「三黄造り」(稲の育成期間中三度、枯れる寸前まで栄養不良にして育てる方法)を行ない、低タンパク質の米を育てています。そして、育成している田んぼ毎の米の成分分析と土壌分析データを蓄積して来たことによって、麹づくりに向いた心白の大きい米、掛け米に向いた低タンパクの米を田んぼ毎に作り分ける「目的別栽培」を行なっています。更に、国内の蔵元としては初めてグローバル有機認証も取得しています。ただし、有機認証を受けた田んぼでは目標の土質に設計に合わす事が難しいことから
一部製品
への展開になっているそうです。
2003年に丸本酒造の在る鴨方町が、全国で初めての「酒米農業特区」に認定されたことで米作りと一体の酒造りにさらに弾みがつき、自社所有の田んぼの他、委託された田んぼでも酒米を生産する様になった結果、今では丸本酒造は岡山県内で生産する山田錦の生産量が一番多いそうで、その為、大量の米を検査してもらう必要から自社内に公式の検査場を持っています。
広大な田んぼを管理する為、大型のコンバインも保有
こうして生産した米は、社内で乾燥したうえで上記検査場で等級検査を受け、社内の倉庫に保管されます。
※ 丸本酒造は、現在全国12蔵が参加する「農!と言える酒蔵の会」発足蔵の一つです。
自社所有のほか委託されている田を含め18haの田で山田錦、朝日といった酒米を育成している

丸本酒造の酒造り

自社精米された原料米は、岡山県の酒蔵で初めて国の登録有形文化財に指定された明治中期から昭和初期に建てられた酒蔵に運ばれ、ここで洗米から蒸し、麹造り酛立て、仕込み、搾り、貯蔵までが行われます。
伝統的な建物の中では、各造りの工程で精密に温度管理がなされた現代的な酒造りが行われています。もちろん、目的別栽培で栽培されたお米は、それぞれの酒造りの用途に合わせて処理(精米、吸水)された上で使用されます。
中でも、梁の構造が独特の米粒一つ落ちていない、ぴかぴかに磨かれた仕込み蔵が印象的でした。
大正時代に建てられた蔵の梁は、特徴的なトラス構造
こうして造られた原酒は、主に半年から1年寝かせた上で出荷されますが、近年では古酒ブレンドのお酒にも取り組んでいるとのこと。
今では自ら米を栽培しない事が理解できないと言いう丸本社長、近年日本酒にもテロワールが説明される事が多くなってきましたが、テロワール(気候風土も含めた土地)じゃなくてドメーヌ(ブドウ畑:日本酒だと田んぼ)なんだと語る言葉には、地元への愛情とともに耕す田んぼを全て知り尽くしてお酒を醸すんだと云う強い思いを感じました。
(Text:山路 日出夫)
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更新日:2024年3月28日

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