吉沢亮インタビュー『猫は抱くもの』“飼い主に恋する猫”役を演じて

本作は、夢を諦め、いつしか心を閉ざして生きるようになってしまった30代女性・沙織と、自分を彼女の恋人だと思い込んだ飼い猫・良男の関係を中心に展開する、ファンタジックなストーリー。

メガホンを取ったのは、『ジョゼと虎と魚たち』（03）や『メゾン・ド・ヒミコ』（05）など、繊細なドラマのなかで人間の心情を巧みに描き出してきた監督・犬童一心。
WOWOWドラマ「グーグーだって猫である」シリーズ以来3回目となる脚本家・高田亮とのタッグにより、本作を“猫映画”の決定版に仕立てあげた。

舞台風にミュージカル風、アニメーションと、さまざまな技法によって表現される人と猫の世界は、思わず夢のなかへと踏み入ってしまったかのように幻想的でユーモラス。
ほかに類を見ないような、個性的な作風となっている。

今回aumo編集部は、沙織を愛するロシアンブルーを演じた吉沢亮に、“猫役”を演じた心境を聞いてきた。

――今作は今まで吉沢さんが出演されてきた作品とはまた違ったタイプの作品だったかと思うのですが、台本をもらったとき、脚本をもらったときの印象は？


吉沢：オファーを頂いたときは、犬童さん監督、沢尻さん主演で、脚本が高田さん…っていう、1度は一緒にお仕事をしてみたいと思っていた方々だったので、かなり贅沢なお話だなと思いました。

脚本を読んだときは…もう単純に「なんだ、猫役っていうのは？」と（笑）。
どこまで“猫”なのか、例えば“猫っぽさ”みたいなものを求められているのか、そのあたりの見極めが難しいなぁと思うことはありました。

でも、ファンタジックな話の中にも、人間の格好悪い部分がしっかりと描かれていたので、面白い作品になりそうだなとは思いました。

――実際に猫役を演じた感想はいかがでしたか。

吉沢：今回の良男（猫）役は動物らしさを意識しながら演じていたんですけど、過去や未来に引っ張られることなく、その瞬間瞬間を生きる感じっていうのは、今までやってきたお芝居と違っていて楽しかったです。

反対に難しかった点としては、人間の僕が猫役を演じたときに、沙織（沢尻エリカ演じる飼い主）との距離感が気持ち悪く見えないかなって。やっぱり飼い主とペットの距離感って、恋人同士の距離感よりも全然近いので…。

でも、意外と映像で観たらそんなこともなく。
沢尻さんのお芝居にすごく引っ張ってもらったなって印象でした。

――じゃれあいとかも、見ていて本当に猫っぽい感じに見えました。ちなみに吉沢さん自身は猫タイプなんでしょうか？それとも犬タイプ？


吉沢：僕は猫だと思います、どっちかというと。
面倒くさがりだし、結構気分屋なので。
僕ずっと思ってたんですけど、良男って、犬っぽいなあって。飼い主に一途だし、まっすぐだし。
だからもし僕が猫になったら、良男よりはもうちょっと猫っぽい猫になると思います（笑）。


――そうなんですね（笑）。じゃあもし自分が猫になったとしたら、どんなタイプの女性に魅力を感じると思いますか？


吉沢：うーん、どうなんですかね…。やっぱり沙織みたいな、ちょっと危なっかしいというか頼りない感じの女性のそばにいてあげるっていうのがいいのかもしれない。

――今回の映画では“猫映画”であり、一方で挫折したときや孤独なときなど“うまくいかない時期特有のキラキラ感”を描いた作品でもありましたよね。今をときめく吉沢さんでも、そんな時期はあったんでしょうか。


吉沢：うまくいかない時期、いっぱいありますよね。
うまくいったり、うまくいかなかったり…そういうことの連続だと思います。
だからもっと、ひねくれてる時期とかもありましたけどね。


――例えば仕事でうまくいかなかったりとか？


吉沢：仕事とかもそうだし、周りからの見られ方とかすごく意識しちゃって、全然ダメだなって。
結構根暗な人間なんで、なんでもネガティブに考えちゃうんです。
でも、意外とそういう心のモヤモヤって仕事の活力になったりするし。
悩みとか苛立ちとかがある人のほうが強い気がします、なんとなく。


――確かに。それで演技の幅が広がるっていうこともありそうですもんね。


吉沢：っていうのもあるし。それか、本当に何も考えてないバカくらいじゃないと意外と続かない気がします（笑）。

――今作では、良男が沙織を探しに未知の世界へ飛び出すシーンがあり、それがストーリーの流れを変える1つの転機にもなっていましたよね。もし吉沢さんが未知の世界へ飛び出すとしたら、どんな世界へ行ってみたいですか？行ったことのない国でも、挑戦したことのないジャンルでも、なんでも結構ですが。


吉沢：ウユニ塩湖に行ってみたいです。
ずっと行ってみたいって思っていて、全然行けてないんですけど。


――絶景がお好きなんですか？


吉沢：好きっていう訳ではないんですけど、絶対に見たことのない世界じゃないですか。
そういう景色を見たら、“何かが自分の中で変わるのかもなあ”って思います。


――ウユニ塩湖、いいですね。訪れた人はさまざまなポーズで写真を撮ってますけど、どういうポーズで撮りたいですか？


吉沢：どう…（少し悩みながら）ん、わかんない（笑）。


――ですよね（笑）。失礼しました！

――aumoユーザーも沙織とほぼ同世代の20代～30代女子が多いのですが、ライフステージが変わるだけに悩みもつきない世代です。そんなaumoユーザーに向けて、吉沢さんから応援メッセージをいただければ嬉しいのですが…。


吉沢：いろいろ大変なこともあると思いますけど、気を張りすぎず、抜けるときは抜くことを意識してくださいね。
きつい状態でやるよりも、余裕ある状態でやったほうがいいこともあると思うので。
自分で余裕をつくれる努力を、頑張ってください！



表舞台に立っているときのキラキラした印象とは打って変わり、芝居に対しての自分の想いを訥々（とつとつ）と語る姿は真摯そのもの。
そしてそのひたむきな姿すら、絵になるほどに美しい。
改めて、大ブレイクの理由が分かった気がした。

（撮影／石井俊）

作品名：『猫は抱くもの』
公開：2018年6月23日（土） 新宿ピカデリー全国ロードショー
配給：キノフィルムズ
©2018 『猫は抱くもの』製作委員会

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